ロシア正教会独特のもので、決まりごとに従ってイコンが一面にはめ込まれ装飾された壁。教会内部の正面に設置されます。ロシア語ではиконостас(イコノスタス)、英語ではiconostasis(イコノスタシス)と呼び、聖障や聖障壁と訳されます。この壁の手前が至聖所(人間界)で、向こう側が聖所(神の世界)とされています。
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原作ではさんざんな扱いのラスプーチン神父ですが、そもそも、正式な“神父”(司祭)ではなく、正教会組織を外れ、家庭も捨てて放浪する自称聖職者だったようです。そして、昔からロシアでは法の外に生きる痴れ者という括りがあり、彼らだけはおおっぴらに政府や皇帝を批判しても許される風潮がありました(一般人が同じことをしたら即終了です)。彼もその部類だったのではないかと言われています。
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皇太子の病気に悩む皇后は信頼している友人から紹介され、彼の魅力に捕らわれてしまったようで、皇后にベタ惚れの皇帝も、ほぼ同調。普段から“叱られなれていない”人たちほど、大声で恫喝されるとむしろ新鮮で、盲信してしまうのかもしれません。
ただの私利私欲の塊の一個人だったのか? それとも?と現在でも解明されていない謎で、最初からそうなのか、後から取り込まれたのか不明ですが、外国のスパイ説もあります。実は、ユスーポフ侯同様、参戦には反対しており、皇帝にも断念するよう説得していたのに、体調不良で参内できなかった間に、決まってしまったという話もあります。何にしても魅力的な人物ではあったのでしょう。
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欧米でも、彼のキャラクターは人気です。
Boney.Mの“Rasputin”(邦題“怪僧ラスプーチン”)は暗殺の様子も歌詞にあり、YouTubeに和訳付きの動画が投稿されています。また、2021年のスパイ映画“キングスマン ファースト・エージェント”にも豪華な衣装と身軽なアクションで登場しています。
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さて、プーチン大統領が登場した時、ロシア帝国の息の根をとめたラスプーチンとは反対に、崩壊したソ連を立て直してくれると思いましたが、今となっては、ロシア連邦の息の根をとめる役のように思えてきました。
プーチン(Путин)は、道(пути)、ラスプーチン(Распутин)は、接頭辞рас(=раз)+путиが由来とされます。разは分散とか物体の最終形態などの意味を加えるようで、разなしのプーチン氏には、ロシアを光の中の道に導くことを期待していたのですが。残念です。