画像は、エルミタージュ美術館所蔵の照明です。豪華だな〜、素敵だな〜、でなく、掃除大変そう、コスパ悪そう、としか思わないおばさんになってしまったのが哀しいです。
でも、ここのかつての主、ツァーリの、冬宮に革命軍が侵入してきた場面で描かれた、勲章など全て外された姿が、しがないただのおじさん過ぎたことに、「権威を示すのに、舞台セットや舞台衣装って大事だ」と思いました。そして、そのための費用は税金でまかなうのだから、何の心配もないですよね。
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さて、“ツァーリ”は、“カエサル”(caesar)家に由来する、ローマ皇帝の称号、“ツェーザリ”(tsezar)から発展したロシア語(tsar)です。ピョートル大帝によってロシアが対外的に“帝国”として認められるまでは、ロシア国内や周辺国で“大公”を指す言葉でした。
“ロシア帝国”のはじまりは、モスクワ大公国イワン3世が、東ローマ帝国最後の皇帝コンスタンティノス11世の姪ソフィアを2番目の妻とし、ローマ帝国の継承者を宣言し、モスクワをローマ、コンスタンティノープルに続く第三のローマと称した15世紀です。
18世紀、元老院から皇帝という称号“インペラートル”がピョートル大帝へ贈られ、対外的な国号を“ロシア帝国”(ロシースカヤ・インペーリヤ)とすると、“ツァーリ”は“ロシア皇帝”の意味に出世しました。
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ロシア語は、царьで、“王者”や“第一人者”の意味もあり、関連した熟語や品詞も多いです。
・царь ‐ птица 鳥の王 = ワシ
・царская водка 王水
・бабье царство かかあ天下
(注)下線は高さアクセントの位置を示す
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かかあ天下(笑)
そう、原作に登場した女性は総じて“強い”人たちでした。
ヒロインは? ヒロインはどうだったのでしょうか?
確かにクラウスへの愛(だけ)は強かった、でも、最期の最期に、「求めていたのは安息だったんだ」って言われた日にゃ、恋に恋するティーンエイジャーは月セを押し入れに投げ込むしかできませんでしたよ。
彼女が無意識に踏み台にしてきた他人の人生や生命・・・はどうなの? ゲルトルートも、レナーテも、おばあさまも、オークネフも。ケレンスキーにクーデターがバレた原因だって(元々、ヌケサクプランだったことは別として)。
少女漫画だから? いや、少女漫画ならヒロインは殺人なんかしないし(二人も!)、夫は自分のうっかりで無駄死にしないし、自身も復讐で殺されないし。
『ベルサイユのばら』で高揚し、『おにいさまへ...』で程よくクールダウン、期待して読み始めた窓。1部が終わり、さあ、どうする? どうなる?と月1の発売日を心待ちにした女学生に、次第にたちこめる暗雲・・・。いやいや、次号こそきっと! 次部こそきっと! このまま終わるはずは!!!という細くなった灯は、すばらしい少年時代の風であっけなく吹き消されました。
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でも、長生きした甲斐がありました。
そんな“意味不明な少女漫画”だったからこそ、今、いろんな“窓論”、“ヒロイン論”等がネット上で語られ、当時知らなかったことも含め、今更ながら、あーでもない、こーでもないと熱を持ち続けていられます。感謝。