これはクリップアートの画像ですので地名は分かりませんが、ロシアの地方でよく見る風景です。大都市には大きな教会が、小さな町や村には小さな教会があり、草原や雪原にポツンと建つ様子は、おとぎ話の一場面のような可愛らしさです("シベリア"の大自然の中ではそんな感傷は吹き飛びますが)。
ソ連時代は宗教は弾圧され、教会そのものも破壊されたり放棄されたりしましたが、細々と維持されたものもありました。共産主義体制が終わり、その反動からか、特にモスクワなど大都市では、過剰とも思える復活と庇護の動きが生じました。特にプーチン大統領が政権の座に就いて以降、再び、政治と宗教が混ざってしまっているように思えます。
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さて、"オルフェウスの窓"でシベリアと言えば、"アカトゥイ"。
月セ連載時に、どこにあるのかを教材の地図帳で調べましたが、流刑地になるほどのマイナーな地名が大雑把な世界地図に掲載されるはずもなくあっけなく断念、その後、かなり詳細な日本製のソビエト連邦地図を入手し、シベリアエリアを目を皿のようにして探しましたが、記載なし。ネットのない時代な上、ソ連政府発行の詳細地図は国外持ち出し禁止の機密扱いでしたから、日本の一般人が拝める機会もなく、久しく疑問のままでした。
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そんなある時、NHKロシア語講座テキストの『聖なるバイカル』(『聖なる湖バイカル』など)というロシア民謡の歌詞の中に"アカトゥイ"の文字を見つけました。
歌自体は耳馴染みないのですが、追手から逃れ、バイカル湖の近くのアカトゥイの山々をさまよっている囚人の歌です。YouTubeで歌詞の字幕付きのものがアップロードされていますからぜひご覧ください。
注)バイカル湖を題材にしたロシア民謡は数多い上、曲名の日本語訳も複数ありますので、注意が必要です。ロシア語では"Славное море ‐ священный Байкал"です。
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そして、今や救世主様々のグーグルアース! そこで検索すればちゃんと出てきます! バイカル湖のずっと東、中国との国境近くです。
日本語なら、"スタリ アカトゥイ"と入力してください。"スタリ"は古いという意味で、近くには"ノーブイ(新しい) アカトゥイ"など○○アカトゥイという地名が多くありますので、この辺り一帯が"アカトゥイ"と思われます。ロシア語なら"Акатуй"、英語なら"Akatui"です。
前述の歌詞の中に登場する"Шилка"(シールカ)や"Нерчинск"(ネルチンスク)という地名も近くにありますから、十中八九ここでしょう。池田理代子氏はこの歌詞からアレクセイの流刑地にしたのかもしれません。ただし、厳密に言えば、アカトゥイの山々を囚人が逃げ回っているのであって、流刑地そのものではありませんが。
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いずれの言語で検索するにしても、数ある候補の中から、ロシアのザバイカル地方のをクリックしてください。何しろ、ロシア国内にあるまったく違う土地の、スーパーマーケット"アカトゥイ"やガソリンスタンド"アカトゥイ"をはじめ、和光市のイタリアンレストランなども出てきますので(なぜイタリアン? 興味津々)。