翡翠の歌

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夏の庭園 : 噴水 [ロシア語のアルファベート]




画像は、“夏の庭園”の噴水の一つです。サンクト・ペテルブルクの公園や宮殿で見た数々の噴水は、皆、潤沢に水が溢れ出ていて気持ちがよいです。


“夏の庭園”は、

Летний  Сад  (レートニー  サート)

(注)下線部は長さアクセントの位置
(注)дは本来は“ド”ですが、語末のため無声音化し“ト”になります


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原作の中で“キリル文字”を見た記憶はあまりないのですが、カタカナで書かれた名前や名称に、子ども心に、耳馴染みのよい言語だと憧れました。


そうそう、コルニロフ将軍の反乱が露呈した時、描かれたチラシが、当時、そして今でも悩みの種です。これは軍事革命委員会が撒いた「ロシア国民へ!」で始まるビラで、今はいろんな画像検索で出てきます。


ただし、同じ内容でも、ロシア語版は、
К  Гражданам  России!


でも、原作では(これも画像検索で実物が出てきます)
Къ  Гражданамъ  Россiи!


ソビエトは、世界各地にいろんな言語でばら撒いたのでしょうけど、インターネットのない時代、これは何語だろうと。ほとんどロシア語なのに、“i”がある。また、“ъ”の位置がおかしい。


同じキリル文字使用言語でも、ウクライナ語とベラルーシ語には“i”があるけど、“ъ”はない。ブルガリア語は“ъ”はあるけど“i”はない。両方、使っている言語が見当たらないのです、今、探しても(なので、当時は完全お手上げ)


もっとも、このビラは百年以上前のもの。その後、自国語(のアルファベット)を整理し直した国も多いので、現在と同じとも限らず。きっと、この3国のうちのどれかだと思いますが、ブルガリア語の可能性が高いかも。





さて、キリル文字の歴史は、中世東ローマ帝国のコンスタンティン=キリルが、9世紀、聖書の翻訳にあたり、文字のなかったスラヴ民族のために、ギリシア文字アンシャル体から、後のキリル文字の基となるグラゴル文字を作り出しました。


時として「キリル文字は英語アルファベットの真似であり、写し間違え(Я)や読み間違え(Нなど)がある」と揶揄されますが、歴史が異なりますので別物です。まあ、すごく広くとらえれば共に同じヨーロッパの言語なのですが。


読み間違えと言えば、名探偵ポアロなどミステリーものにも、手掛かりになる遺留物に記された、犯人のイニシャルとして登場しますね。





ロシア語のアルファベートは33個。小文字のほとんどが大文字をそのまま縮小したものなので覚えやすいです。子音の数は英語と同じです。


   ロシア語  英語
母音  10個   5個
子音  21個  21個 
記号   2個   0個 
合計  33個  26個


子音 21個のうち、
有声子音 11個
無声子音 10個


【活字体】


印刷物に使われる文字ですが、手書きでも使います。


↓母音の種類  名称  大文字と小文字の違い 
硬 А а アー  英語と同変化
  Б б べー  大≒小
  В в ぶぇー 大=小
  Г г ゲー   〃
  Д д デー   〃
軟 Е е イェー 英語と同変化
軟 Ё ё イォー  〃
  Ж ж ジェー 大=小
  З з ゼー   〃
軟 И и イー   〃
  Й й イッ   〃 イ・クラトカヤ(短いイ)

  К к カー   〃
  Л л エル   〃
  М м エム   〃
  Н н エン   〃

硬 О о オー   〃
  П п ペー   〃
  Р р える  大≒小(巻き舌)
  С с エス  大=小

  Т т テー   〃
硬 У у ウー   〃
  Ф ф えふ  大≒小
  Х х ハー  大=小

  Ц ц ツェー  〃
  Ч ч チェー  〃
  Ш ш シャー  〃
  Щ щ しゃー  〃 (唇を横に広げて)

  Ъ ъ トぶょーるドゥイ・ズナーク 〃(硬音記号)
硬 Ы ы ウィ   〃
  Ь ь ミャーふキー・ズナーク 〃(軟音記号)

硬 Э э エー   〃
軟 Ю ю ィユー  〃
軟 Я я ィヤー  〃





【斜体】
活字体が少し傾いている形です。主に、辞書や書物の活字体の中で、引用文などを表します。下の3つの小文字はかなり異なるので、これだけ知っていれば、困らないと思います。




  ・ 小文字の“г”     





  ・ 小文字の“д”     




  ・ 小文字の“т”    




【筆記体】
ほとんどが、活字体や斜体を想像できる形です。文字と文字の繋ぎ方が英語と少し異なります。商品のパッケージ、現地での看板やレシート、ホテルの宿泊カード、手紙や封筒の宛名、クリスマスカードなどで見かけます。





現在はそのような見方はされないのかもしれませんが、教養や社会的立場、身分、階層の観点から、手書きにおいて筆記体は活字体の上だったようです。タイプライターを打つのは秘書など使用人の仕事で、ドラマ"名探偵ポアロ"の中で、ジャップ警部が初めてのタイプライターに悪戦苦闘している場面もありました。


日本でもゆとり世代(子どものせいではありません)あたりから筆記体の授業時間がなくなりました。まあ、それまでも、所詮は数コマしかなかったので、習得するかどうかは生徒自身の問題でしたが。


授業でなくなったと知った私は一大事だと、家で教え、子どもはそれで書くようになり(活字体より速いし)、テストの答案でもそのようにしたところ、教師が「?」となり(つまり、読めない。もちろん、子どもは手本のように丁寧に書いていましたよ)、それからは、テストは活字体で、となりました。う〜ん、何だかねぇ、英語が好きで英語を学び、その教師になったのでは? 貴族や芸術家の書いた手紙や、王の命令書などを読みたいと思わなかったのかな?


ともかくも、子どもは当時、スパルタ親の強制で訳も分からず、不本意ながら習得したわけですが、現在でも筆記体はあちこちで用いられているので、仕事上も趣味上も、結果的には感謝されています。