翡翠の歌

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ゲオルクス・ターラー : 船 [聖ゲオルギーの間]




聖ゲオルギーは帝政ロシアでは国家と軍隊の守護聖人として崇められていました。本気で信じていたかどうかはともかく、ユスーポフ侯にとってもユリウスにとっても守護神だったわけですね。





兵士のお守りとして流行ったゲオルクス・ターラー。きっと徴兵された男や、下層の兵士、少し地位のある将校が、妻や、母親、姉妹、恋人、愛人、幼馴染などから、無事の帰還を願って渡されたのでしょう。


侯は…もらえなかったでしょうね。自身もママも身分が高すぎて、庶民のアイテムなんて、手に取ったこともなかったかもしれません。娼館に平民の愛人でもいればもらえたかも。


大尉は…別の意味で、もらってなかった…でしょうね。


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冬宮(現エルミタージュ美術館)の"聖ゲオルギーの間"の両側に並ぶのは、二本一組でバルコニーを支える列柱で、古代建築によく見られる縦の溝彫が施されたイタリアの白大理石です。柱頭や、バルコニーの手すりの小柱、シャンデリアや天井の装飾などはブロンズに金箔を貼ったもので、白い柱とのコントラストが素晴らしい。16種の名木で作られた床の模様は水面に映ったかのように天井の模様と同じです。


この大広間には玉座のほかには家具調度品は何も置かれなかったので、建築美そのものが引き立ちました。そう、この大広間で座ることが許されたのは、皇帝だけなのです。