"アントニオ・ヴィギの間"に隣接する、こちらも家族用のダイニングルームですが、日常的でなく儀式的な場面で使われていたとのことです。内装には、ベネチア・ルネッサンスのモチーフを取り入れています。
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柱や梁、テーブルや椅子、燭台、シャンデリアなど全体が、重厚で耐久性が特徴のオーク製です。金のユリの刺繍が施されたオリーブ・グレーのダマスク織の壁紙の組み合わせが見事な効果を生み出しています(このオリーブ・グレーの壁紙は、現在、出入口の上部などのみが残っています)。
柱などは紋章のパターンの彫刻で埋め尽くされています。これには、スマロコフ・エルストン公と伯爵の両方の紋章の要素を取り入れて作られた、当時、最新のユスポフ家の紋章も含まれるそう。世代交代や婚姻により、新しい紋章やカルトゥーシュ(王名枠と訳される)が作成され、部屋や玄関、劇場などの至るところに掲げるのは、西洋っぽいですね。
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さて、オーク(дуб ドゥプ)には、ヨーロッパオーク(ヨーロッパナラ)をはじめ多くの種類があり、日本では常緑樹を樫、落葉樹を楢と区分するのが一般的ですが、ヨーロッパではそれらをまとめてオークと総称し、ほとんどが落葉樹とのことです。
加工しやすく木目も美しいことから家具や床材、酒樽などに広く使われます。
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大木で堂々とした姿からそのような男性に例えられる一方で、口語では、"でくのぼう"を意味します。漢字では、"木偶の坊"と書き、木偶は木彫りの人形のこと。
余談ですが、дубの他の意味は(ドン川やドニエプル川の)大型木造船で、дубинаは丸太や棍棒の意味です。不器用な誰かさんのイメージ通りでしょうか?