翡翠の歌

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料理 : パスハ [祭日に関連するロシア語]




ロシア正教では復活大祭(西方教会の“イースター”)を“パスハ”(ヘブライ語に由来)と呼び、その日にちは毎年異なります。教義による厳しい食事制限が続いた後の“祭の祭”ですので、定番のご馳走を作って盛大にお祝いします。


もっとも現代は厳密に教義を守る人は限られ、楽しいだけのイベントになっているようです。ただパスハの歴史はロシア正教よりも古く、春はもう訪れないと絶望するほどの長く厳しい冬が去ることを心から喜ぶ行事だったそうで、それがキリスト教伝来時に復活大祭と関連づけられたと言われていますから、楽しいのならそれでいいのかも知れませんね。


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お菓子の定番は、“クリーチ”と“パスハ”(祭と同名)で、教会に持って行って、飾り卵(посхалиное яйцо)と共に祝福してもらいます。


“クリーチ”は、イースト発酵させた背の高い円筒形の、干しぶどうとナッツ入りケーキです。


“パスハ”は、カッテージチーズがメインで、それに更に乳製品(生クリームやスメタナ、カスタードクリーム等)を混ぜ合わせ、水分を抜いて固めたあっさりしたチーズケーキで、円錐やピラミッドの上を少しそいだ形(四角錘台)です。白色は神の栄光と清らかさ、神の子羊、復活の喜びを象徴するとのこと、描かれた“XB”は「キリストはよみがえり給えり」リーストス ヴァスクリーセ)の頭文字です。因みに“ハリストス”(ヘブライ語に由来)は“キリスト”の意、日本各地にもその名の教会がありますね。





板を組み合わせ、水分が抜ける仕組みの専用型は、内側がくり抜いてあり、文字や文様が浮き出るようになっています。現地でガイドさんに尋ねたところ、「その時季でないと売っていないし、それも教会関連店とかでしか・・・今時みんな家庭で作らずにできたものをスーパーで買っていますよ」とか。大学院生男子の言うことなので、どこまで一般的な話なのかは不明ですが、購入は諦めました。


後日、日本でも入手のあてがなかったので、代りに製菓用品のピラミッド型を買いました。先端の小さな隙間から水抜きができ、うまくいきました。





油を使わないので洗い物も楽ですし、火を使うのもわずかな、混ぜて待つのみのお菓子をぜひお試しください。


レシピはこちらから 


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祭日に関連するロシア語を紹介しましょう。


一日 дeнь

祝祭日 праздник
    праздый дeнь




おおみそか
канун Нового года


新年
Новым год

新年、おめでとうございます。
Поздравляю вас с Новым годом.


復活祭(イースター)
Пасха
・3月末から5月初めの日曜日で、毎年変わります
 基本的には、春分の日のあとの、最初の満月の、次の日曜日ですが、西方教会と東方教会で異なり、それぞれの教会のホームページなどに、「今年は何日か」が掲載されています。
・お菓子の名前は全て小文字
・ユダヤ教の"過ぎ越しの祭り"


国際女性デー(3月8日)
Meждународный жeнский дeнь
・ミモザなどの花束を、男性から、身近な女性へ渡す習慣が知られています


メーデー(5月1日)
Пeрвоe мая
・春の訪れを祝う昔ながらの"五月祭"でもあり、"労働者の日"でもあります。


クリスマス・イブ(1月6日)
канун Рождeства
сочeльник


クリスマス(1月7日)
Рождeство
・降誕祭
・Рが小文字ならば、普通の"誕生日"という意味


クリスマス、おめでとうございます。
Поздравляю вас с Рождeством.

クリスマスツリー
Рождeствeнская ёлка





今のロシアのクリスマスの日付はちょっと変わっています。帝政ロシア時代が終わるまでは、採用していた暦(ユリウス暦)の12月25日でした。革命後、近代化のため、ヨーロッパと同じ暦(2週間くらいズレているグレゴリオ暦)を採用した際、自動的にスライドして、1月7日なりました。日本の七夕やお盆もそうですが、"国際基準"に合わせると、本来の意味や気候とは異なってしまいますよね。一年に一度のデートが、梅雨の真っ最中になって、織姫も我らがヒロイン同様、なかなか彼に会えません。


もっとも、元日をキリスト教国と同じに合わせたのですから、クリスマスも12月25日にしてもよかったのでしょうけれど、そもそも当時、宗教なし!が党是でしたので、宗教がらみのことなど、どうでもよかったのでしょう。単純に数字をずらして、結果として、気づいたら、新年をまたいでしまったようです(共産党にとって、12月25日は、フツーの日)


更には、宗教行事も禁止されました。ですが、クリスマスは特に子どもにとってはプレゼントをもらいごちそうを食べられる貴重な貴重なイベント。すっごい不満の声が民衆から上がったらしく、革命直後の混乱期に国民の人気を取りたかった革命政府が、「さすがにキリストの生誕祭とは呼べないけど、"もみの木のおまつり"ならいいよ」と、詭弁のような許可を出したそうです。ヨールカまつり(Ёлка)ですね。





パスハも復活祭ですので、宗教がらみですが、元々、古いロシア土着の春の訪れを祝うお祭りに、あとから入ってきたキリスト教が乗ったので、キリスト復活祭でなく(ないふりをして)、パスハとして、ソ連時代もお祝いされました。





そしてちゃっかりしているのが、現代ロシア人。今や多くが厳格なキリスト教徒ではないのに、楽しいイベントとお休みは大歓迎。12月24日の欧米のクリスマス・イブから、25日のクリスマス、大晦日や元日の大騒ぎ(しんみりはありません)を越え、1月6日のロシアのクリスマス・イブ、7日のクリスマスまで、2週間をエンジョイします。ダブルクリスマス!!


ですので、この間、ロシアに旅行しても、例えば美術館がお休みだったりするかもしれませんので、要注意です。


ただ、クリスマスマーケットは大規模で、大いに楽しめそうですよ。行きたかった…。