翡翠の歌

5、"ルタバガ"はどこへいったのか




一言で言えば、後から登場したジャガイモに駆逐されてしまったのです
ヨーロッパやロシアで主食の一つとして"ルタバガ"が食べられていた時代には、ジャガイモはありませんでした。ですから皆これで満足していたわけですし、それが大きく育つことは願いでもあり、嬉しいことだったでしょう。


しかし次第にヨーロッパの国々でジャガイモが広まり、ピョートル大帝が外遊の際、ジャガイモの富国強兵におけるメリットを知り、ヒマワリ(種から搾油する)と共に自国でも栽培を奨励しはじめたのです。以降、紆余曲折はありましたが、農民も一度ジャガイモの良さを知ってしまうと、もう"ルタバガ"には戻れなかったのでしょう。


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ジャガイモの、他に代えがたいメリットを、のちのちに判明したことも含めて列挙します
・寒冷地でも荒地でも栽培可能
・生育期間が短い
・他の作物よりも出来不出来の差が少ない
・小麦より反収がある(一説には三倍)
・地域によって年二、三回の収穫が可能
・地下茎なので、地上部が虫や鳥にやられても、軍靴に踏み荒らされても、それなりに無事である
・貯蔵性に優れている
・"ルタバガ"より、デンプンを多く含み、カロリーも倍
・野菜であると同時に穀物としても位置付けられる。主成分がデンプンなので、国によっては主食とされている
・ビタミンCに富むので船乗りや兵士の食料に適する
・ビタミンCは加熱や長期保存により失われやすいが、ジャガイモのはデンプン質に包まれているので失われにくい
・食用だけでなく、デンプンを製造し、さまざまな食材や添加物、蒸留酒の原料に使える
・形状や加熱の具合、水分量により多種多様な食感となり、様々な調味料や油脂、乳製品などとの相性が良い


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【栄養価の比較表】


ルタバガ
ジャガイモ
日本の白いかぶ

ルタバガ
ジャガイモ
日本の白いかぶ
エネルギー
 37kcal  76kcal  28kcal
ナトリウム
 12mg  1mg  67mg
水分
 89.43g  79.8g  91.87g
カリウム
 305mg  410mg  191mg
タンパク質
 1.08g  1.6g  0.9g
カルシウム
 43mg  3mg  30mg
脂質
 0.16g  0.1g  0.1g
マグネシウム
 20mg  20mg  11mg
炭水化物
 8.62g  17.6g  6.43g
リン
 53mg  40mg  27mg
食物繊維
 2.3g  1.3g  1.8g
 0.44mg  0.4mg  0.3mg
ビタミンB6
 0.10mg  0.18mg  0.09mg
ビタミンC
 25mg  35mg  21mg

ルタバガ:FoodsLinkに掲載されていたアメリカ農務省農業調査局National Nutrient Database for Standard Referenceより
ジャガイモ、日本のかぶ:wikipediaに掲載されていた文部科学省日本食品標準成分表からのデータより