翡翠の歌

10、日本での"ルタバガ"




明治初期に国策により様々な外国の植物が北海道に導入され、作付を試みられましたが、"ルタバガ"は食用としては普及せず、牛などの飼料に用いられた程度のようです。いかんせん日本には煮込まなくてもおいしく、漬物(生食)にもできる日本人好みの"かぶ"がありましたから。


ですから、『おおきなかぶ』のお話が入ってきた大正時代に、日本人の画家はおなじみの白いすべすべの"かぶ"を描きました。ロシアの黄色いごつごつした"かぶ"を知らなかったでしょうし、知っていたとしてもそれでは子どもに"かぶ"とわかりませんから、敢えて採用しなかったでしょう。


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そして昭和になり、戦時中に米を増量する"かて米"の材料の一つとして用いられたようですが、以降普及しなかったところをみると、日本人にとって、食べ続けよう、作り続けようとするような味ではなかったのでしょうね。


現在も、一般的なデータには表れていませんが、北海道等では飼料として栽培されているらしいです。また食用としては、気仙沼市大島や一関市で昔から伝わる種を地元の名前をつけて栽培している農家や、珍しい西洋食材として海外からの種を植えている農家もありますが、手広くはないようで、五訂日本食品標準成分表にも掲載されていません。


日本の一般的な平地では初秋にまいて冬には収穫できます。ネット通販では種も売られ安価ですが、数百粒も入っているので農家の方でもなければなかなか手が出せませんね。