翡翠の歌

09 Лена:お姫様?




近頃は静かになった、また。
夏の前はお屋敷から出ようとされては捕まってたし、暮れには泣き叫んでらした。
女の子なのに、若旦那様もお付きの軍人も腕をあんなに掴んで・・・痛いよ。



マフカ様はいっつも本や楽譜と一緒。
病気になるんじゃないかと思うくらい・・・この前も寝込んでらして・・・本のせいじゃないけど。

本は・・・とっても大きくて重いの。
ヴェーラ様に言われて、時々片付けるのを手伝って差し上げる。
いっぱい字があって、それを書き写しておられるらしい紙もいっぱい。
どれもあたしにはまるでわかんない、どこの国のかも。
でもきっとフランス語、だよね?
ロシア語はおわかりにならないから。

そうそう、ピアノってあんなすごい音がするんだ、初めておそばで聞いた時はびっくり。
音楽室やサロンで弾いていらっしゃる、リュドミール様を座らせて。
お友達みたいなの、お二人は。

お食事もお茶も皆様とご一緒・・・若奥様がいらっしゃる時だけは別だけどね。
ご親戚のお嬢様でもないし、お客様でもない。
とってもおきれいだもん、どっかのお姫様なのかな。





それにしても、やっぱり気になるんだね、きれいな女の人が。
カーチャが言ってた、男ってそんなもんだって、あんたも気をつけなって。
あたしは大丈夫、きれいじゃないから・・・きれいになりたいけどね。
でも気をつけるって、なにって聞いたら、そのうち教えてあげるよって。

それでね、エフレムったらしょっちゅう聞いてくる、どんな人なんだとか、何を話したかなんて。
おとついは、名前を書いてもらって、だって・・・。


まずさ、お前のを書いてもらうんだよ、フランス語でさ。それから、マフカ様のもって頼むんだ
ほんとはそれだけ欲しいんでしょ
そうさ、お守りにするからさ。だけど変だろ、はじめっからそんなこと言ったらさ。だから、字を覚えたいからってお願いするんだよ


子どもだって思っていっつもお菓子をくれるんだ、あたしは新しいリボンが欲しいのに・・・今度そう言ってみようかな。





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